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山口地方裁判所 平成8年(わ)53号 判決

裁判所書記官

持田伸治

本籍

山口県宇部市大字東須恵一五一〇番地

住居

山口県宇部市大字際波二一八九番地の二一

食肉販売業

糸永允慰

昭和一八年一月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官野島光博出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山口県宇部市大字際波一三四六番地の五において、「糸永精肉店」の名称で食肉販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと考え、

第一  平成三年分の総所得金額が三五一七万五二八七円で、これに対する所得税額が一二七四万三〇〇〇円であるにもかかわらず、実際の所得金額には関係なく、適当過少な所得金額を記載した内容虚偽の所得税確定申告書を作成するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一三日、山口県宇部市常盤町一丁目八番二二号所在の所轄宇部税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が三四七万四五〇〇円で、これに対する所得税額が一六万三五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成八年押第一六号の1)を提出し、もって不正の行為により、所得税一二五七万九五〇〇円を免れ

第二  平成四年分の総所得金額が三八七六万〇八四一円で、これに対する所得税額が一四四九万九五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成五年三月一五日、前記宇部税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が三五四万三八〇〇円で、これに対する所得税額が一六万三二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成八年押第一六号の2)を提出し、もって不正の行為により、所得税一四三三万六三〇〇円を免れ

第三  平成五年分の総所得金額が二九一一万五三五二円で、これに対する所得税額が九九四万四〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成六年三月一〇日、前記宇部税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が三八六万三五六〇円で、これに対する所得税額が二四万八六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成八年押第一六号の3)を提出し、もって不正の行為により、所得税九六九万五四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一五通

一  谷口伸二の検察官に対する供述調書

一  谷口伸二作成の申述書

一  大蔵事務官作成の現金有価証券等現在高検査てん末書及び脱税額計算書説明資料

一  押収してあるノート三冊(平成八年押第一六号の4ないし6)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成三年分)

一  押収してある平成三年分の所得税の確定申告書一枚(平成八年押第一六号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成四年分)

一  押収してある平成四年分の所得税の確定申告書及び予定納税額の通知書控一綴(平成八年押第一六号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成五年分)

一  押収してある平成五年分の所得税の確定申告書及び予定納税額の通知書控一綴(平成八年押第一六号の3)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は平成七年法律第九一号による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加算をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲で被告人を懲役一〇月及び罰金八〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邉了造)

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